知的障害の分類[編集]
原因による分類[編集]
- 病理的要因
- 染色体異常・自閉症などの先天性疾患によるものや、出産時の酸素不足・脳の圧迫などの周産期の事故や、生後の高熱の後遺症などの、疾患・事故などが原因の知的障害。
- 脳性麻痺やてんかんなどの脳の障害や、心臓病などの内部障害を合併している(重複障害という)場合も多く、身体的にも健康ではないことも多い。染色体異常が原因の場合は知的障害が中度・重度であることが多く、外見的には特徴的な容貌であることも多い。
- 生理的要因
- 特に知能が低くなる疾患があるわけではないが、たまたま知能指数が低くて障害とみなされる範囲(IQ69または75以下)に入ったというような場合。生理的要因の知的障害がある親からの遺伝や、知的障害がない親から偶然に知能指数が低くなる遺伝子の組み合わせで生まれたことなどが原因である。合併症はないことが多く、健康状態は良好であることが多い。知的障害者の大部分はこのタイプであり、知的障害は軽度・中度であることが多い。「単純性精神遅滞」などともいう。
- 心理的要因
- 養育者の虐待や会話の不足など、発育環境が原因で発生する知的障害。リハビリによって知能が回復することもある。関連用語に「情緒障害」がある[9]。また、離島や山岳地帯や船上などの刺激が少ない環境で成育した児童の場合も、IQが低い場合が多い(知能指数#生活環境参照)。IQテスト自体○や△など抽象的な図柄を見分けるといった文明社会に馴染んだ者にとって有利な問題となっている。従って、たとえば都会生活を経験したことのない先住民族などには不利な評価が下されることになる。
知能による分類[編集]
教育の分野では、軽度の生徒を「教育可能」、中度の生徒を「訓練可能」と分類する。医学的に考えると精神年齢は12歳以下と推定される(厚生労働省などの発表)。
- ボーダー(境界域)
- 知能指数は70 - 85程度。知的障害者とは認定されない。
- 軽度
- 知能指数は50 - 69程度。理論上は知的障害者の8割あまりがこのカテゴリーに分類されるが、本人・周囲とも障害にはっきりと気付かずに社会生活を営んでいて、障害の自認がない場合も多いため、認定数はこれより少なくなる。生理的要因による障害が多く、若年期の頃では健康状態は良好。
- 成人期に診断されることも多く、療育手帳が認定されないこともよくあるという。近年は障害者雇用促進などのために、精神障害者保健福祉手帳(特に3級程度)の所持者が増加傾向にある。
- 中等度(中度)
- 知能指数は35 - 49程度。合併症が多数と見られる。過半数の精神年齢は小学生低学年程度。
- 重度
- 知能指数は20 - 34程度。大部分に合併症が見られる。多動や嗜好の偏りなどの行為が、問題になっている。概ね精神年齢は4歳児程度しかない。
- 自閉症を伴うほうは、噛み付きやパニック、飛び出しなど問題行為が絶え間ないケースが多い。
- 精神障害者保健福祉手帳の対象にはならない。
- 最重度
- 知能指数は19以下程度。大部分に合併症が見られる。寝たきりの場合も多い。しかし運動機能に問題がない場合、多動や嗜好の偏りなどの行為が問題になる場合がある。実際の精神年齢は1歳児程度。
- 重度と同様、精神障害者保健福祉手帳の対象にはならない。