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理想の彼女を作る

理想の彼女を作る

2015/08/22

「不気味な遠隔操作」

国立情報学研究所のティム・バーンズ氏(撮影:陶山勉 以下同)
 今回の発表は、正しくは「量子テレポーテーション」の研究成果に関するものだ。人間のテレポーテーションが可能かどうかについて研究チームの見解を聞く前に、まずは量子テレポーテーションについて説明しよう。
 我々の身の回りにある物質は、原子や電子といった微小な粒子で構成されている。そして、これらの粒子には、その微細な状態を示す「情報」が乗っている。情報というのは、例えば原子や電子なら「スピン」、光の構成粒子である光子であれば「偏光」などのことだ。量子テレポーテーションとは、こうした粒子にまつわる情報を、一瞬にして遠隔地に移す技術だ。実際に粒子そのものが移動するわけではないが、微細な粒子のレベルでは、情報が別の粒子に完全に乗り移ることは、粒子自体が移動するのとほとんど同じ意味を持つ。
 原子や電子、光子のような粒子の振る舞いを説明する学問は「量子力学」と呼ばれる。量子テレポーテーションは、量子力学の理論から導き出される「量子もつれ(量子エンタングルメント)」と呼ぶ不思議な物理現象を利用する。
 量子もつれについての説明はこうだ。例えば、ある場所で2個の粒子を同時に作り出すと、この2粒子はまるで「双子」のように特殊な関係性を共有するようになる。2個の粒子が別々な方向に飛んで行ったとしても、途中で邪魔が入らない限り、物理的にはひとつの方程式で両方の状態を説明することができる。従って、「双子」の粒子の一方についてスピンや偏光といった状態を測定すると、もう一方の粒子が仮に宇宙のはるか彼方にあったとしても、その状態が自動的に決まってしまう。「相対性理論」で有名な物理学者アインシュタインが当初、この現象を「不気味な遠隔操作」と呼んで批判したのはよく知られた話だ。